2008年4月23日水曜日

ノンフィクション書評3/4

過去2回は経済事件をテーマとした書であったが、今回は政治事件。
佐藤優『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて』
著者についての説明は省略。
テーマは
①外務省の「伏魔伝」たる所以、その組織的特殊性と外交手法の一端 
②国策捜査とは何か、そしてどのように行われるか
③拘留後塀の中でも活かされる情報戦略家としての能力
の3つに大別される。
特に印象的なのが②小泉政権下、ケインズ的均等配分からハイエク的傾斜配分への変換の時代の狭間で、外交的に不要と見切られ(ロシア政策がさほど重要ではなかったと思われる)見せしめ的に逮捕された鈴木宗男氏並びに著者(談)。東京地検特捜部の威信をかけて執り行われた捜査(しかし著者によれば、地検は近年ワイドショー型世論に迎合する形で、表層的な社会正義の権化として君臨することに存在意義を見出しているとの見解)
③周りの景色と一体化して事物を記憶するというインテリジェンスならではの記憶術(メモすらも御法度とされるインテリジェンスの命綱)特に塀の中で聞くこととなった小泉首相の北朝鮮訪問の様子を一言ももらすまいと与えられた携帯ラジオに全身全霊を傾けるDictation術は彼の真骨頂であろう。
 まるでチェスを見ているかのような著者と担当地検の「知的刺激に富んだ」取り調べの描写は秀逸。彼のワイン片手にチェスの駒を動かすような優雅な(落ち着いた)話術及び筆力は非常に味わい深い。(もちろん双方相当に神経を摩り減らしてはいるわけだが)塀の中という情報のない状況下、Prisonor's Gameに陥ることなく、自己韜晦(決して逮捕された罪について反省するのではない)の末、外交の世界(情報屋)を一抜けし学術の道を究めたいと思うに至った著者。その後ハイペースで出版し続ける氏であるが、まずこの処女作で最も伝えたかったのは情報化社会の極北で生きることの虚しさなのであろう。

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