不定期書評第2弾。今回は『「欲望資本主義」に憑かれた男たち』
まず表紙のインパクトにグッとくる。村上氏・ホリエモン・折口氏、堤義明、緒方元公安委長官。ここ数年経済界のみならずワイドショーをも騒がせた面々たちに黒地をバックに不気味に映える。
内容もジャーナリスト秀逸。まさに犯罪者と億万長者は紙一重を思い知らされる。ただホリエモンや村上は氷山の一角、市場には彼らより数段狡猾な輩が闊歩、その結果マネーゲームのみに使われ市場の片隅に打ち捨てられた幾多の銘柄があることを本書は語る。(筆者の言葉を借りれば「焼畑農業」による「ゾンビ企業」の誕生) 例えば
・ライブドアより少し前にITバブルをまともに体現した「光通信」
・伊藤寿永光(イトマン事件被告)と黒木正博とに翻弄されたマザーズ上場第一号「リキッドオーディオ・ジャパン」(現在「ニューディール」)のに悲惨な末路
・史上最年少上場(当時26)として話題になった「クレイフィッシュ」がICF(かの梁山泊がバックと囁かれる)にボロボロにされた経緯
・兜町オールスターが暗躍した「丸石自転車」の私募CB
・「シンニッタン」:上場しているにもかかわらず株主無視のワンマン経営
・若気の至りでトップが悪質な大型分割を連発した「ゼクー」と「シーマ」
そのほか、新井将敬と日興、緒方元公安委長官と朝鮮総連の関係、三木谷逮捕説の真相、などかなりヤバい踏み込みようのネタもある。他方、Ripple Wood(新生銀行の上場益はほぼ無課税)、Steel Partners(露出過多により日本でのビジネスは困難になったといわれる)、Goldman Sachs(2012までに上場できないときには全額返金といった超有利条項付きのUSJ出資)などをケースにした外資ネタ、武富士・グッドウィル・西武などの企業不祥事まで、幅広く網羅。本書を通じて、「Post失われた10年」、すなわちITバブルに始まり、小泉政権、六本木ヒルズ誕生、サブプライム余波まで、この数年が何だったのか、ひとつの時代の終わりなのか序章なのか、その中で浮沈した表紙の面々たちの必然的役割、そしてモラリティの低い割に閉鎖的な日本市場の行く末考えさせられる。
気になった点が一つ。筆者はMSCBやOffshore Banking, Non-recource Loan などおなじみの錬金スキームについても解説とその濫用が市場にもたらした影響についても言及。ただし、先端の金融工学を否定的に捉えているのは筆者の偏見か。このようなMentalityは筆者の唱える日本市場の質向上にと自己矛盾する気がする。
参考:
Robert Shiller 「それでも金融技術は必要だ」
J Power vs. TCI issue
兜町事件簿
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