2010年8月13日金曜日

現代アートへの誘い

『現代アートビジネス』 by 小山登美夫(2008)

 富裕層の道楽として成熟してきた現代アートへの投資。Sotheby's や Christie's などの有名オークション、村上隆や奈良美智など世界的に有名な日本人アーティストの名前は皆さんも一度は耳にしたことがあろう。富裕層とは程遠い私にとっては全く未知の世界であるが、現代アート作品及びアーティストがどのように「流通」し、どのように「ビジネス」として成り立っているかを垣間見る入門書的な一冊である。

1.生産者(アーティスト)の立場から
 アーティストとて、自分の作品をいかに売り込むか(プレゼンテーション能力)、商業主義といかに距離を置くか、などビジネス的才覚が非常に重視される時代になった。(派手に宣伝広告し「コピーライト」を掲げる村上隆と、全くそういったものと無縁な奈良美智、と日本の両巨頭は対照的スタンス) また、いかに足がかりをつくるか、という意味でギャラリーに作品を扱ってもらうことを目標にするアーティストの卵が増えているらしい。小さなギャラリーから一歩を踏み始め、最終的には聖地 Gagosian Gallery(Leo Castelli が若手アーティスト発掘のために1957年にNYに開設した画廊)を目指す、いわば、地域の草野球チームからNPB、そしてMLBへ…みたいな職業人的感覚、後世での評価より現世での充足を重視する傾向か。

2.売り手(ビジネスコンダクター)の立場から
 若手アーティスト発掘の場はギャラリーだけではない。特に注目度が高いのが、多くのアーティストが一同に会するアートフェア。ギャラリーのみならずアートフェアの世界にもヒエラルキーがあり、スイスの「アートバーゼル」を最高峰として、日本最大級の「アートフェア東京」や無名の若手のみを取り扱うフェアなど数多く存在する。またアートフェアにはGoldman Sachsなど投資銀行のスポンサードが多く、富裕層と現代アートをマッチングさせる場としても機能している。こういったイベントやギャラリーを手掛けるキュレーター、ギャラリストなども現代アートの一翼を担う重要な存在である。(アーティストと言っても過言ではない)

3.顧客(投資家)の立場から
 一昔前までは、ギャラリーという閉じられた世界が主流であったアートマーケットも、前述のフェアやたインターネットオークションの誕生で敷居が低くなった。が、現実的に、アート作品は著名なギャラリーやフェアに出展、あるいはカリスマと呼ばれるコレクターが買いつけたことでそのブランド価値が高まる。そういう意味で現代アート発展の鍵を握っているのは一部の富裕層であることに違いない。バブル期の日本のような投機的買い漁りは市場にプラスに働かないことは歴史的に証明済み。今日、中東・BRICs諸国等の富裕層が、無名アーティスト作品を手当たりしだい青田買いしているという噂もある。彼らに望むのはアートを心から愛し、育んでいこうという態度。アートは一握りの人間に独占されるべきものではなく、広く人の目に触れてこそ価値が高まる、というのは古代からの普遍的事実。

4.日本の市場
 強み:オタク文化(Japan cool?)の浸透とそれを生み出した創造性、資金力
 弱み:批評性の希薄、国際的に有名な美術館の不在、税制・予算等財政的劣後
 機会:元来「美術館好き」な国民性(特に旅行先などで)
 脅威:中国・韓国などでの市場の勃興

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