バイオホラーの次はミステリーの王道たる密室殺人、ということで貴志祐介作品2連続。今回は『硝子のハンマー』
前半は、泥棒が本業と思しき探偵・榎本と新米弁護士・青砥純子、後半は人生をリセットしたいと願う青年・椎名章が軸になって物語が進行していく。それぞれのプロフェッションからピッキング、盗聴、戸籍改変といったマニアックな裏情報を散りばめたストーリーは裏社会エンターテインメントの極み。榎本と椎名を通じて我々は現在の最先端の犯罪者像を知ることとなる。(特に椎名には、ネットや「月刊ラジオライフ」「完全失踪マニュアル」等からの情報から素人でも努力と根性次第ではここまでできる、という脅威を感じさせられる。)そこにハゲタカファンドや闇金融、上場前会社のスキャンダルなど既に現代のリアル社会でエンタメ化している事象を要所要所に散りばめる演出も心憎い。
結論的には前述の犯罪者2人の脳みそが突出していて、周りの常人にはついていけないような展開であったが、裏を欺くには裏からの刺客というその構造は、今までのミステリーにはない痛快さである。読後しばらく経って冷静に考えてみれば、本書でとられる殺人方法にかなり無理があるのでは、といった疑念がわいてこないでもないが。。。そんな疑問も吹っ飛ばすほど、勢いで押し切らんとする本作。精緻な取材と想像力を掻き立てる世界観、2作で私は完全に筆者の虜になってしまったようだ。
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