「人獣細工」小林泰三
表題、「吸血鬼狩り」、「本」の3部収録。バイオホラーをユーモアとペーソスで彩った少女の半生記、8歳で殺人鬼となった少年の独白、という前二作もそれぞれ面白いが、圧巻は最後の「本」。
本作は二重三重にもストーリーが交錯するいわゆるメタ小説構造となっているが、その中の作品「芸術論」が実に興味深い。この部分だけスピンオフしてもかなり面白い作品になるのではないだろうか。「芸術論」はその名のとおり学術的論文の体裁を下敷きの文章に「名づけられざる土地・ゲリル」を舞台にしたファンタジー・フィクションを絡める、というと少し荒唐無稽に聞こえるかも知れないが、どのスタイルでも適応できる筆者の力量に改めて感嘆してしまう。「芸術は情報だ。」という理念は筆者のベースであり、物事の本質をとらえた名言であると思う。また、共生生物の生態解説の後に「PCにおけるハードウェアとソフトウェア」のトピックスを持ってくるあたりは(最初は何の話だ、オイと思いつつも)、筆者こそは知的欺瞞の名手であり、一介のホラー作家ではないことを伺い知ることができる。
結論:小林泰三=アカデミックとエンタメを縦横無尽に行き来できる稀有なる作家
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