「鼻」 曽根圭介
Irvine Welshの"Filth"を彷彿させる表題も面白かったが、個人的には、今の格差社会を究極的に日常生活に落とし込んだ「暴落」がヒット。もし個人株を売買する株式市場が存在すれば、というシンプルにして誰もが思いつかないような目のつけどころが面白い。もう一作「受難」はカフカや安部公房の不条理小説の設定よりポップにした作品。
小林泰三が現代の夢野久作とすれば、曽根氏は筒井康隆か星新一か、もしくは日本のIrvine Welshになるのか。これから作品を重ねるにつれ、どのようなポジションを獲得するのか興味深い。本作に収められている三作のテーマをざっくり一言で表すと、「格差社会・ゲーム脳・差別」ということになろうが、これは筆者の早大中退→サウナ従業員→漫画喫茶店長→無職、という異例の経歴と無縁ではないであろう。自らあえて人生の階段を順調に下ることに喜びを見出し、社会の底辺を見てきた視点で描かれる世界はどのようなものか、今後の作品に期待したい。
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