「リスク」 by Peter Bernstein (1998)
このタイミングで読むことに意義がある書。
最終章でも触れているとおり、「偶然の支配から世界を解放する」すなわち「サイコロを振る手」を支配することが本書に出てくる英雄達の動機付けである。自然は繰り返す傾向を持つがそれは不完全な繰り返しであることの意味を理解しようと努力した男たちの物語である。
まずは、ケインズ。確率理論の先人達が使った「事象」という用語の拒否(予測が過去の発生頻度に依存しているニュアンスを嫌って)、代わって「命題」を多様。将来とはより能動的判断に依存したoutputであり、「不確実性」こそが新しい経済理論の中核と唱えた彼は、古典学派とも「レッセ・フェール」(自由放任主義)と真っ向から対立した。彼の提案は1936年の世界情勢に確実にマッチしていたといえよう。
次いで、(一気にとんで90年代になるが)カーネマンとトヴァスキー。彼らの最大の功績は利得に関する意思決定と損失に関する意思決定の非対称性を行動心理学的アプローチから発見したことである。
かように、確率論に人為的側面を取り込んだ後もなお、我々は以下2つの問題から逃れられない。
①過去は将来に対して脆弱なガイド役でしかないこと。時期もまた重要。
②成功する戦略は短命である、ということ(いわゆるFree Rider Problem)
他方、実社会では、80年代のPortfolio Insurance~株価の下振れに対して自動的に売りをかけるリスクヘッジ的プログラム。市場のLiquidityを過信し、Volatilityを過少評価したがために、87年10月19日ほぼ無に帰した~を経て、90年代はDelivertiveの時代となるわけだが、その本質は不確実性の軽減にほかならない。が、市場の過熱とともにVolatilityを制限するのではなく、その部分で賭ける方向に走った(Subprimeに象徴される)のが現在に惨事に繋がっていると思う。Delivertiveに関しては、「剃刀のように髭をそることもできるし、自殺することもできる」というFT誌コラムニストの言葉以上にうまく言い表した表現は思いつかない。が、今回の失敗を機に、資産の安全化と同時に金融工学のさらなるInnovationを図ることは非常に大切である。く誰もリスクをとらなかったら、自由経済市場は衰退していく一方なのだから...(Alan Greenspan)
最後に、筆者は、確率の基となる人間の合理的行動は、確率を考慮して判断するという規範をもとにして成り立つとしめくくる。このような状況下でも過去のデータを冷静に分析し行動することが大事ということであろう。
(メモ)分散によるリスク回避は一気に損失するリスクを回避するためでしかない。
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