20年近く前の著書。随分と大風呂敷な命題である。確かに、本書の上梓後、世界の様相、とくにヨーロッパ周辺のは大きく変わった。今や「ヨーロッパ」は単なる地名を超えて境界のない運動体・融合体というのが実態である。
ヨーロッパに対する私の疑問は、なぜナショナリズムがあれほど強いのか、その一方で、なぜ外へ外へと向かおうとするのか、この相反する二面性に尽きる。(裏表紙にある「分裂と統合」の原因を探るため)この「分裂と統合」に加え「中心と辺境」の視点から本書をおおまかにおさらいしておきたい。
①分裂と統合
啓蒙主義とロマン主義、エリートと農奴、キリストとイスラム(そしてユダヤ)、アングロ・サクソンとラテンそしてスラブ、イタリア趣味とフランス趣味(そしてたまにスペイン趣味)、王制と民主制、ヨーロッパの抱えてきた数々の対立軸と歴史的転換点(宗教改革、市民革命、産業革命etc.)にそのヒントを垣間見ることができる。教会・赤十字などの価値観がフレームワークだったヨーロッパ社会に国家(State)と国民(Nation)による統合が実現したのは、ほんの19 世紀末ごろである。そのころには、全ての文化は普遍的であり、かつ少数の者に専有されるべきものである、というヴォルテール的価値観(啓蒙主義)は批判にさらされ、逆に民族的個別性こそ武力をもってして擁護すべきものであるという考えが根付くようになっていた。(このnationalismの源は、キリストの「聖」性、哲学的思考、コスモポリタン的価値観ひいては普遍性を助長する科学や芸術の否定などマイナス面が非常に多く歪んだものと評価せざるを得ない)
ただ、対外的に抜きんでようとすれば、隣国に戦闘を仕掛けるか、第三世界で支配を強めるしかなかったヨーロッパ諸国にとって、2度の世界大戦 による疲弊とアメリカのヘゲモニーは、国としてのidentityと同時に諸国間の連帯の強化という新たな命題を課され、今のヨーロッパ統合に繋がっている。
②中心と辺境
かつて、とある国(スウェーデンだったか?)のModern Art Musiumで"The Center of Europe"なる前衛フィルムを見た記憶がある。カメラはヨーロッパの中心を探して旅を続けるが、最後に着いたのはロシアのとある郊外の町であった、というフィルム。当時は意味不明であったが、この本を読むにつけ、さもありなんという気もしてくる。ヨーロッパと非ヨーロッパの境界は常に流動的であり、また、ヨーロッパの定義によっても変わってくるものである。本書では17C初頭は南北方向の国々(教皇領・ヴェネツィア・西・仏・ポーランド・神聖ローマ帝国)がヨーロッパの命運を司る列強だったものの、宗教改革を契機として、磁場が南から北に移動、18C末には東西方向(英・仏・普・墺・露)に列強が固まったとしている。いずれの場合もフランスを中心としている点がポイントである。20世紀を経て、その中心軸は徐々に東へ移動していくのであろうか。
アメリカの台頭とロシアの近代化はヨーロッパ近代化の副産物である。また、エリート層の啓蒙主義から労働者層のロマン主義へのシフトとその融合なども興味深いサイドストーリーである。
0 件のコメント:
コメントを投稿