『黄色い風土』(1959)
文庫本にして600頁超、清張渾身の力作。小樽から真鶴・熱海、さらには名古屋と日本の半分を縦断して折りなすスケールの大きいミステリー。偽札、偽装自殺、中国からの刺客、そしてラストの青木ヶ原樹海での死闘などなど、手島龍一『ウルトラ・ダラー』のデジャヴ的めいたパーツも多々あり、今の時代でも十分に通じるプロットを半世紀前にすでに手掛けていた清張の発想力に感服する。
すでにここかしこで言われていることであるが、江戸川乱歩から横溝正史といった「新青年」派の「エロ・グロ」系が主流となりかけていた日本ミステリ界に「社会派」というジャンルを萌芽させた清張。彼は社会に潜む悪、社会から派生する悪というものを描き続け、単なる娯楽以上の大人の作品を提供しつづけた。(本書では、紙幣偽造に、第一次世界大戦以降、敵国の経済混乱を引き起こすために用いられた謀略という単なる犯罪以上の重みをもたせている)
それにしても、主人公・若宮が一介の雑誌記者から気づけば名探偵になっていっているのは面白い。彼の妄想がいつのまにか推理として説得力を持ちはじめるのである。また、東京―小田原―熱海―名古屋間(東京―名古屋で約8時間?)という新幹線出来る前の移動事情が知れるのも面白い。
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