“Gran Torino” by Clint Eastwood
久々に文句なく「面白い」と思える映画に遭遇。去年ハイプバリバリの“Slum Dog Millionaire”なんか観に行くんじゃなかった、と後悔しきり。
くしくもこの映画のテーマも「後悔」。悔いの連続を人生の締めくくりに向かう偏屈老人が最後に出会った隣人、アジア人の冴えない少年。彼もまた、同民族のチンピラにそそのかされ、老人の愛車“Gran Torino”を盗もうとした悔いを原点に生きる。
作品は差別・偏見・暴力のオンパレードである。が、決して不快感はなく、むしろアメリカの都市部に住んでいたなら覆い隠されて気付かないでいる部分(人種ごとのセクショナリズム)、あるいはあえて触れようとしない部分(タブー)が、中西部の辺鄙な田舎を舞台にすることにより、ストレートにあぶり出され非常に爽快感がある。Clint演じる主人公が、前述のアジアの少年に“Man's talk"を教えてやるといって、床屋に連れていくシーンは最高に笑える。(床屋の親爺とClintの掛け合いはSuper cool!)
思っても言わない「知識と教養がある善良なアメリカ人」と、そんなアメリカ人とは普段なかなか交わることのない「順応性が高く勤勉ながら閉鎖的なアジア人」という化けの皮を見事にまで崩してくれた巨匠の腕に感服する。この作品を最後に監督業に専念するという噂もあるClint Eastwood。もし本当だとしたら、名優の引き際としてこれ以上相応しい作品はないであろう。
この作品から個人的に想起されるのは"American Beauty"(1999)。言うまでもなくGeneration X以降の「歪んだアメリカ」をさらけ出し、アカデミー賞に新たな境地を拓いた秀作であるが、"Gran Torino"は同じ「歪んだアメリカ」を老匠Clint の眼がどう捉えているか、という観点から見ても興味深い。
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