「忌憶」 小林泰三
学生時代からの知り合い、藤森直人・三輪博美・田村二吉それぞれを巡る悲惨な物語。
一作目「奇憶」における藤森直人のダメ人間ぶりはかなりインパクト強い。が、パチンコにおける景品交換制度の考察(筆者特有のプチ・マニアックな世界が展開されている)を見るに、彼は決して頭の悪い人間ではない。が、何かにつけて無計画・快楽主義的な性癖が彼を悲惨な結末へと導くことに。ここにチョイ役で博美と二吉を登場させ後二作の伏線を作り、本書は見事、連作オムニバスへとステップ・アップする。
二作目「器憶」はさほど斬新さはない為、割愛させていただく。
三作目は映画「メメント」を活字化し、より思考的要素を取り入れた意欲作。時系列的には一作目の結末からの続きであるが、藤木の悲惨な末路を上回る悲惨な人生を強いられる二吉のカオスぶりには同情を禁じ得ない。「メメント」を見た方ならわかると思うが、もともと論理的に破綻した設定を主に据える物語は非常に難しい。が、そこに果敢に切り込むのが、かつて「酔歩する男」や「海を見る人」で読者を量子力学とエンタメの融合の世界に導いた小林泰三にほかならない。そして、そこに事物の本質をさりげなく折り込むのも、小林泰三その人である。二吉が最後、常人以上の集中力で理路整然と考えを整理した中に散りばめられたフレーズ「人間とは記憶の集積」、そこに本書の真実がある。
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