2009年11月17日火曜日

反面教師のプロジェクトX

『ロズウェルなんか知らない』by篠田節子
 篠田節子のアイデンティティといえば、元公務員(八王子市役所)という市井人・職業人的視点から、世相・事件の内側をさらけ出し、「あなたの周りでもこんな騒動は起こり得ますよ」と警鐘を鳴らす、あるいは滑稽さに拍車をかけてとことんエンタメ化する、「劇場型○○(事件or犯罪or政治or)」の狂言回し的作風であろう。
 「UFOによるまちおこし」をテーマを据えた本作においてもその真骨頂は遺憾なく発揮される。舞台のモデルは山梨あたりの寂れた温泉街か。そこに住む若い衆(といっても40前後)のちょっとした気まぐれが、UFOスポットとして、突如オカルトマニアを発火点とした脚光を浴びることになり、そこに住む人々の生活を翻弄していく・・・。世代の断絶、都市と地方の格差、といったやや普遍性を帯びた構造的問題が物語の根底にあるわけだが、それらを最近とみに弱者に容赦なくなったネット掲示板やマスコミがここにも登場し、増幅させ、あげくの果てには田舎に住む人々を翻弄してゆく。さらには、ビジットジャパン、モンスターカスタマー、などなど昨今の世相を反映する設定や登場人物が散見され、作者が00年代をどのように捉えているかがうかがわれ、非常に興味深い。これを読めば、最早、手つかずの辺境、喧噪とは無縁の田舎暮らしなど日本ではあり得ないことを実感させられる。
 ちなみに、タイトルはアメリカで約半世紀前に起きた有名なUFO事件らしいが、私自身知らないのはさておき、作者も本当に知らなかったと吐露している(あとがきタイトルが「ロズウェルなんて本当に知らない」)のには笑った。SFやオカルトを出発点として、それを対極のビジネス・ドラマに昇華してみせたひとつの到達点とでもいうべき作品である。篠田節子作品は、本作に限らずどのジャンルにも縛られないし、逆にどのジャンルでも通用する厚みと深みを持ち合わせている。

0 件のコメント: